ばちらぬん｜沖縄復帰50周年映画特集

あらすじ

監督の故郷である与那国島の日常や祭事を取材したドキュメンタリーと花、果実、骨、儀式などをモチーフに幻想的に描かれる世界が交差しながら物語は進む。現実とフィクションはやがて溶け合い、ジャンルの枠を超えた映像によって島に紡がれてきた歴史、文化、人々の記憶がスクリーンに映し出される。日本の最西端、沖縄県与那国島の言葉で「ばちらぬん」は「忘れない」という意味をもつ。

スタッフ

監督・脚本・撮影・編集

東盛あいかAIKA HIGASHIMORI

• 
• 1997年生まれ 与那国島出身

京都芸術大学映画学科・俳優コース在籍中に、学生映画に多数出演しながら映画について多方面から学ぶ。卒業制作として初監督した『ばちらぬん』が、ぴあフィルムフェスティバル2021のグランプリを獲得。本作では主演や編集、美術なども兼任している。与那国語を勉強しながら発信しており、沖縄タイムス等でコラムも連載。俳優としても活動中。

　

• Twitter：https://twitter.com/aika_higamo
• Instagram(監督)：https://www.instagram.com/toremoro514/

撮影・照明

温少杰/東盛あいか

録音

西垣聡美/村中紗輝

美術

笹木奈美/東盛あいか

衣装

平井茉里音/山本桜

制作

木村優里/三井康大

メイキング・スチール

西川裕太

コメント

池松壮亮（俳優）

素晴らしい映画に出会えたと思っています。人の記憶、血の記憶、土地の記憶、そういったことを観るものに感じさせてくれます。私たちは自分たちの短い人生にとらわれがちだと思いますが、もっと長い精神の歴史の上を生きているということを、映画は当たり前のようにわかっているようでした。言葉にならないことをなんとか映像でつかみ取ろうとしている強い意志を感じ、そのようなこの映画の強い精神と技術的なバランスに、とても感銘を受けました。

井浦新（俳優）

故郷への深い想いと映画づくりの熱情が、魂に力強く優しく温かく響いてきた。
なんて美しく純粋な映画なんだろう。

大後寿々花(俳優)

自然と共に生きる。愛する人と生きる。 『Dr.コトー診療所』の撮影で初めて与那国島を訪れた時の衝撃は今も心に深く残っています。3時間ほどで回れる小さな島だけど、大地が、海が、空がどこまでも広がっている。島の自然と人のあたたかさを知ると、何度でも帰りたくなる。 「忘れてはいけないこと」と「忘れたくないこと」が詰まっているこの映画と与那国島がとても愛おしいです。

越川道夫（映画監督）

性急な想いがある。今ここで抱きしめなければ、永遠に失われてしまう愛おしいものがある。抱きしめるだけでは足りない、彼女は呑み込み、自らの身体にそれを刻みつけなければ足らない。群島からひとりの映画監督が誕生した。そのことを心から祝福したい。

五十嵐耕平（映画監督）

これから僕はいろんなものを失っていくだろうし忘れていくだろうけど、この映画に出ている人の、水のような目の美しさを忘れることはないだろう。失われゆく文化や場所を、彼女たちは映画の中に創造し再生する。太古の昔から脈々と受け継がれてきたように、歌って踊って祈る。みんなが忘れないために、自分たちのやり方で。

椎井友紀子（プロデューサー）

“ばちらぬん”は心のコンパス 与那国島の空や海は、手を伸ばせば捕まえられるくらい近くに感じる 与那国島の島民は、昔自分が生まれたふるさとの人々の様に感じる 与那国島の言葉は、生まれてくる前、母親のお腹の中で聴いた羊水の音の様に感じる 木々をすりぬける風、波音、 牛の鈴、馬のﾋﾂﾞﾒの音、弔いの唄、太鼓の響き、遠くで聞こえる子供たちの遊び声、そして老いた語り部達の寝顔 それら全て、誰しもが抱えている埋もれた記憶 この映画はそんな人間が、どこから来て、どこに戻りたいのかを導く人生のコンパスの様に感じるのは私だけ？

仲村颯悟（映画監督）

映画が総合芸術と言われる所以たる作品がついに沖縄から生まれた！恐るべし東盛あいか監督！完全に物語へ吸い込まれていきました。生まれくるものと消えゆくものの狭間に今がある。でも、「消えゆくもの」と思い込んで勝手に忘れてしまったのは他ならぬ自分かもしれない。空高く羽ばたいているのにも関わらず、土の奥の奥まで繋がっている。次々と紡がれていく天と地を謳歌するジブリ作品のような鮮やかな与那国島の風景を前に、そんなことを感じました。劇場を出た後、大切な場所と大切な人を思わずにはいられなかった。

宮崎大祐　(映画監督)

撮らなければ、撮られなければならない映画だけがひとの心を震わせ、時の無情さにもあらがえるのだという事実を東盛あいか監督の『ばちらぬん』を観て再認識しました。飛び交う与那国語が「日本映画」の境界線を破壊していく様を英語字幕でたどる体験も最高にスリリングでした。

平一紘　(映画監督)

『どんなもんなのだ？』と穿った目で見た。
僕が何年狙っても入選すらできなかったPFFグランプリ作品‥！
鑑賞終了。僕はこの映画が好きだ。
何故我々は消えゆくもの、失われるものに魅かれるのか、その答えの一端がこの映画『ばちらぬん』には有った気がする。この映画のコメントを監督に求められ、自分がこの『ばちらぬん』の良さを伝えられるか不安になった。なんかこう、難しいんです。
情緒的なカットが登場人物たちの瑞々しい若々しさをエッセンスに最後は、心のやわらかな部分を掴んでくる。この映画はとある文化のドキュメンタリーであり、ひとりのクリエイターのもがきであり、青春である。
与那国島の事はほとんど知らない。知らなかったし、知ろうともしなかった。
でも、この映画を観たから、たぶん、いや必ず、あの情景は僕の心に残り続けるだろう。
そしてきっとそれこそが東盛監督の狙いなのだろう。お見事です。

宮平貴子(映画監督)

不思議の島・与那国の物語を、現実と空想、過去と今、個人的物語と社会的な問題提起が絶妙に混ざり合う東盛ブレンドで堪能した。悠長に構えていたらきっと失われていたであろう数々の瞬間(モーメント)が愛おしい。ぜひ目に焼き付けてください。

工藤梨穂(映画監督)

画面を横断する少女の疾走が与那国と異世界の連帯する光景を映し出していく、力強くそれでいて切実な"継承"についての映画だった。
それらの営みと共存する海の深い青さにも何度だって心奪われるでしょう。
『ばちらぬん』はその力強さを携えて、私たちが出会うことのなかった人々や生き物と、果てしない遠い時間の中で繋がっていたかもしれない奇跡を信じさせてくれる。

鈴木卓爾（俳優・映画監督）

与那国島の『ばちらぬん』。なかからふくれてきて成形されたものが人や馬や亀や映画になって歩き出す。与那国と東盛あいかさんが大きな声でデュエットを唄い、指先位の気づかない声で囁くので、つながらないはずのものが出会える映画の魔術と、島に眠ってた何か人智を超えた力が目を覚まして、何か滅多に撮れないはずのものが映画に写っている気がする。