- あらすじ
- 沖縄県与那国町、この島には高校がない。若者たちは中学卒業とともに一度は島を離れることになる。別れと再会を予感しながら、学校生活や豊かな自然で戯れる放課後、思春期の本音が漏れる会話を通して多感な十代の日々が映し出される。そして、失われつつある島の言葉「どぅなん」や伝統文化がゆっくりと若い世代へと受け継がれる様子が描かれる。緩やかで郷愁溢れる国境の島の記録。
ヨナグニ~旅立ちの島~|沖縄復帰50周年映画特集
ヨナグニ ~旅立ちの島~
ABOUT
ヨナグニ
ABOUT
外からの視線で見据えた日常の島
失われゆく文化、甘酸っぱい青春、
それでも明日へ風は吹く
イタリア出身で欧州に拠点を置くクリエイターが、なぜ与那国に注目したのか?
イタリア出身の映像作家アヌシュ・ハムゼヒアンと写真家ヴィットーリオ・モルタロッティのコンビが与那国島に初めて訪れたのは2018年。これまでにクラゲの研究者である日本人男性を取材した『Monsieur Kubota』(2018年/ドキュメンタリー)やアメリカの原爆実験とオッペンハイマー博士の記録を追いかけた『Most Were Silent』(2018年/書籍)など、映像や写真、インスタレーションなど特定の媒体にとらわれない形で作品を制作してきた二人は、与那国の言葉"どぅなんむぬい(与那国語)"が日本で最も消滅の危機に瀕している言語の一つであること知る。最初の滞在時に“少数言語の消滅”というワードの裏側には、一つの世界が消失することに二人は気付く。その言葉を話す人が少なくなり、その言葉で表されていたはずの風景、文化、関係性もまた変化せざるをえない局面を迎えていることを最初の滞在時に感じ取った。二人は消失の危機にあるコミュニティの痕跡を3年間にわたり記録していった。島の風土や人々の暮らしを写真や映像、音声で記録し、国際的に有名な社会言語学者であるパトリック・ハインリッヒ教授とのコラボレーションのおかげで、ドゥナン語や島の象形文字であるカイダ文字についてもテキストとして記録した。
そうした中で映画のカメラを向けられたのは、“日本語”を喋る14歳の少年少女たち。我々が頭の中で描いてきな日本の国境的な与那国像とは打って変わり、島の日常をありのまま描き出す。それはかつて、そこにあったもの、消失した世界や言語をありありと私たちに見せてくれる。
スタッフ
- 監督・撮影・編集
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ヴィットーリオ・モルタロッティVittorio Mortarotti
アヌシュ・ハムゼヒアンAnush Hamzehian -
- 左:ヴィットーリオ、右:アヌシュ
共同で映画、書籍、美術作品など媒体を問わず制作を行っている。
これまでにクラゲの研究者である日本人男性を取材した『Monsieur Kubota』(2018年/ドキュメンタリー) やアメリカの原爆実験とオッペンハイマー博士の記録を追いかけた『Most Were Silent』(2018年/書籍)などを発表。
2018年から3年間に渡り与那国島の言語と文化、日常のささやかな移り変わりを取材・記録。 その成果として、本作である映画『ヨナグニ~旅立ちの島~』(原題:YONAGAUNI)の他、書籍『L'Isola』、空間美術(インスタレーション)作品『L'Isola』を制作。
- 撮影・録音
- アヌシュ・ハムゼヒアン、ヴィットーリオ・モルタロッティ
- 編集
- Gabriel Gonzalez
- 製作
- La Bete
監督たちの言葉
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この映画では、与那国島で300人が話す「どぅなん」と呼ばれる方言に焦点を当てています。
人々から忘れられつつある方言に注目するのは意外に思えるかもしれませんが、言語を保存することや、その消失を撮影することは、アイデンティティの混乱と戦うことを意味し、必要不可欠な行為だと私たちは信じています。
私たちは、島の中学生に着目しました。彼らは1年後には高校に通うため、島を離れなければいけません。
いつの日かこの子たちは、社会で直面する現実とは関係のない世界で生きてきたことに気付くでしょう。
野生の馬や、果てしなく続く海に囲まれた島で育ったことは、彼らの成長を妨げるものでは全くないと感じています。
イベント
- 展示「与那国を通して世界をつなぐ展- L'Isola」
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本作の監督、アヌシュとヴィットーリオは本作の映画に留まらず、同時に与那国をテーマとした書籍と美術作品も発表した。
島の写真と言葉のアーカイブで構成される美術作品「L'Isola」(イゾラ、イタリア語で「島」の意味)はイタリア、フランスでの展示を経て、2月より沖縄県内での展示中。
4月には東京・イタリア文化会館にて展示される。 - ■ 作品ステートメント
- 2010年にユネスコが実施した危機に瀕した世界の言語リサーチによると、過去50年間で250の言語が消滅し、現在3000の言語が危険にさらされている。言語は、何世紀にもわたって紡いだその土地についての正確な知識をもったまま消えてゆく。言語が消えることは、一つの世界やビジョンが永遠に消えることも意味する。イタリア出身の映像作家アヌシュ・ハムゼヒアンと写真家ヴィットーリオ・モルタロッティは与那国島で、いままさに消失の危機に瀕する「どぅなん」を記録、観察するために長期滞在を敢行した。その滞在中に彼らは映画、書籍、インスタレーションという様々な形式で与那国島といまそこで生活する人々を記録した。本作「L'Isola」はその中でも音響作品とビデオインスタレーションを通して現在の島に残る言葉と文化を描いた。「L'Isola」はイタリア語で「島」を意味する。
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- ■ IN 与那国島
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会場:DiDi与那国交流館 → MAP
会期:2022年 2/11(金)~ 2/15(火)
*本企画展は無料ですが施設内の常設部分は有料となります。
- ■ IN 沖縄本島
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会場:南城美術館 → MAP
会期:2022年 2/18(金)~ 2/27(日)
令和3年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業「文化芸術の魅力発信応援プログラム」事業
支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会
主催:ムーリンプロダクション 後援:与那国町 協力:南城美術館 - ■ IN 東京
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会場:会場:イタリア文化会館 → MAP
会期:2022年 4/20 (水) ~
共催:ムーリンプロダクション、イタリア文化会館 - ■ 書籍「L'Isola」オンラインショップにて発売中!
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https://utrecht.jp/collections/all/products/lisola-vittorio-mortarotti-and-anush-hamzehian
https://www.iack.online/products/lisola-by-vittorio-mortarotti-and-anush-hamzehian - ☆監督の来日イベント、舞台挨拶調整中。最新情報はNEWS欄でお知らせします。
コメント
- ジャン・ユンカーマン(映画監督)
- 「与那国の情けは命ある限り続く」と歌う「どぅなんスカニ」の島唄が映画に出てきます。「スカニ」は「後ろ髪を引かれる思い」の意味があるらしい。中学卒業生が島を離れる時を描きながら、この小さな、大自然の中の、何もない島の不思議な引力が海の底から見えてくるようです。静かで素敵な映画です。
- 金子遊(批評家・映像作家)
- 「国境の島の西端に暮らす中学生たちが、どんなふうに遊び、将来をどのように思い悩んでいるのかを、イタリアからの撮影隊は活き活きと撮った。 それが沖縄や国内のフィルムメーカーじゃなかったのが、ちょっとだけ悔しい。」
- 村山匡一郎(映画評論家)
- 沖縄の本土復帰で日本最西端の島となったヨナグニ。海に囲まれた自然豊かな島に暮らす人々の生活と風景を、若者たちの夢や希望に焦点が当てながら、カメラは説明抜きに淡々と点描する。そんな若者たちが高校に入学するため島から旅立つ姿に、島独自の言葉や文化が消えつつある苦い痛みが重ねられる。国境の島に育ち、海の彼方を見つめる彼らの眼には何が映っているのだろうか。
Billing
- 2021年|フランス|日本語・与那国語|ドキュメンタリー|カラー|74分|5.1ch
- 監督:アヌシュ・ハムゼヒアン、ヴィットーリオ・モルタロッティ
- 出演:金城元気、中井舞風、野底みみ、小島南帆、伊東珠璃、長濵衣織
- 与那国語字幕翻訳・監修:東盛あいか
- 後援:イタリア文化会館
Billing
- 2021年|フランス|日本語・与那国語|ドキュメンタリー
- カラー|74分|5.1ch
- 監督:アヌシュ・ハムゼヒアン、ヴィットーリオ・モルタロッティ
- 出演:金城元気、中井舞風、野底みみ、小島南帆、伊東珠璃、長濵衣織
- 与那国語字幕翻訳・監修:東盛あいか
- 後援:イタリア文化会館